『相場サイクルの見分け方』 浦上邦雄

皆さんこんにちは。
年初から大荒れの相場環境ですが、皆さんいかがでしょうか。私はキャッシュが積み上がっているので相場を眺めているだけになっており、今は嵐が収まるのを待って、先導株が見えてくるのを待っていようと考えています。(スマホでポチッとトレードするのだけは厳禁です。。。自戒)
 
さて、去年から「逆金融相場」というワードが聞こえてきていましたが、私は相場サイクルをほとんど意識せずに投資してきたため、実感が湧きませんでした。
 
去年一年間は苦しい戦いを強いられましたので、それをなんとか打破したいという思いもあり、冬休みの宿題として『相場サイクルの見分け方』という本を読みました。ここでは自分自身の振り返りという意味も込めてブログに残してみようと思います。
 
 
1990年に発売された本なので上昇としては古いところがありますが、過去を学ぶ上では全然支障はありませんでした。また、各相場サイクル毎のリード業種が書かれているのですが、今回のコロナショックからの立ち上がりを振り返ると当てはまる部分がかなり多く、目からウロコでした。
 
乱文だったり、自分の中で咀嚼できていない部分が多々ありますので、これをきっかけにいろいろな方と議論できるといいなと思っています。(私は投資歴4年ということで本格的な相場サイクルを体験するのは初めてです)
 
それではよろしくおねがいします。
 
★目次★
 
 

1.普遍的な相場サイクル

 
金融相場--++
業績相場++
逆金融相場++--
逆業績相場--
 
まずは4つに分けられている相場サイクルを金利・業績・株価という観点でまとめてありました。
金融相場 → 業績相場 → 逆金融相場 → 逆業績相場 → 金融相場 → ・・・
と相場が循環しながら世界経済が成長してきたと書かれています。
 
この表だけをみると金利・業績・株価が上下するタイミングがずれていることがよくわかります。「株価は業績の先行指標」「金利は株価に大きく影響を与える」という意味が少しだけわかった気になりました。
 
個人的に、その相場サイクルがどのように回っていくのかイメージできなかったため、その流れを次に列挙してみました。
 
 

2.相場サイクルの動き

 

逆業績相場 → 金融相場

  1. モノが売れない
  1. 在庫を抱えない
  1. 金を借りて設備投資しない
  1. 貸す先が無いので、銀行の金利が下がる
  1. 貸す先が無いので、金融機関が債権を買い増す
  1. 株安なので、株式を一定額買い続ける年金基金などは株式数多く購入する
  1. 株式投資に少しずつお金が流れる
  1. 不景気が続くと、金融・財政両面で景気対策スタート
  1. 不景気の株高状態に突入
 
金融・財政政策とは??
・公定歩合(金利)を下げる
・量的金融緩和:国債・ETFの買い入れ
・公共投資を拡大する
 

金融相場 → 業績相場

  1. 公共投資拡大により、住宅着工が増える
  1. 耐久消費財(家電、車)の売上が増える
  1. 道路・橋・港湾整備などの官民共同大型プロジェクトが加速
  1. 官公需要により、木材・鋼材・セメントなどが底入れ
  1. 全体景気はまだ悪いが、素材価格が上がり始める
  1. 民間の調査機関が景気底入れを確認 景気見通しを引き上げる
  1. 素材産業の需要が旺盛になり、大型の設備投資に踏み切る
  1. 産業用機械などの設備投資関連企業の受注が急増(日本はいまここ?)
  1. 様々な部品の需要が旺盛になり物価が上がる
 

業績相場 → 逆金融相場

  1. インフレ2%・完全雇用を政府・中央銀行が目指す
  1. 安定していればいいが、とあるところでインフレが行き過ぎてしまう
  1. 金融引き締めを検討しはじめる(アメリカはいまここ?)
  1. 金融引き締めを開始 利上げ
  1. 金融引き締めのソフトランディングを狙うが・・・
  1. 強気相場のフィナーレは様々 大統領死去やオイルショックなどなど
  1. 株価下落。。。
 

逆金融相場 → 逆業績相場

  1. 景気拡大の維持に失敗した結果、逆業績相場へと移る(強気相場よりも期間が短いのが一般的)
  1. 金融引き締めが強すぎた結果、資金需要が衰える
  1. 金利が下落気味になるが、景気はますます冷え込む
  1. 企業業績が大幅な減益予想が出てくる
  1. 財務内容が悪い企業、業界のシェアが低い限界供給的企業は赤字へ転落する。
  1. 上場企業の大型倒産も出現する
  1. 逆業績相場の最終局面に近づくほど株価の割高感が強まる。
  1. 「二番底」が大体の逆業績相場では出現する。1つ目の底がショックと重なり大きく暴落すると出現しないケースもある。
 

相場サイクル全体の流れ 所感

 
この流れを追っている中で、下落相場がどのような流れで起こるかがあまり見えてこなかった。その理由は本書にも書かれており、下落相場はオイルショックや大統領死去など様々な要因をきっかけに大きく下落することが多いとのことであった。
 
以下、本書から抜粋する。

 
上昇相場はおおよそ一本道で金融相場を弾みにして業績相場へと一定の手順を踏んで展開されるのに対し上昇の流れが決まっているのに対し、下落相場は往々にして竜巻かハリケーンのように株式市場を襲う場合がある。国際金融市場の連動化、情報化時代の進展とともに、弱気相場のスタイルが多様化させることになるだろう
 

 
 

3.各相場のリード業種

 
ここでは、私が一番知りたかったそれぞれの相場でどのような業種、セクターを狙うべきかということを表にしてまとめてみました。
 
本書では様々な相場格言が散りばめられており、その時々の相場の的を得ていると感じた部分、好きな格言を一緒に載せることにしました。(こうやってうまいこと言う人になりたいなぁ。。)
 
上げる業種下げる業種相場格言
金融相場金利敏感セクター 銀行、証券、公共サービス、保険 建築、土木、不動産設備投資関連不景気の株高 強気相場は悲観の中に生まれる 出来高は株価に先行する
業績相場 前半大型株、低位株 素材関連銘柄 鉄鋼、総合化学、紙パルプ、非鉄、セメント業績相場は懐疑の中で育つ 業界3番手が大化け株へ
業績相場 後半中小型株、値がさ株 加工産業 設備投資関連、消費財
逆金融相場小型株:大型株を上げるパワーは無い 財務健全:借金はマイナス ヒット商品による成長公共サービス 素材関連強気相場は幸福感の中で消える
逆業績相場不況抵抗力のある企業 電気、ガス、鉄道、薬品 仕手株自己資本比率低い銘柄
 
また、各相場でパフォーマンスの出やすいセクターの関係がまとまっていましたのでそちらも載せておきます。(出典:コンテクスチュアル・インベストメンツ)
 
 
 

4.2020年からの相場と照らし合わせる

 
1~3で相場サイクルとはなにか、その流れを産み出すものはなにか、それぞれの相場でパフォーマンスが出やすい業種はなにか、を本にかかれている通りまとめてみました。
 
ここでは、私が初めて体験している相場である2020年から今までの相場と照らし合わせてみようと思います。
 

 

金融相場

 
今回のコロナショックでは逆金融相場・逆業績相場を経て下落したというよりも突然のショック状態に見舞われたと考えており、2020.04からの大規模金融緩和により突然金融相場へと突入したように考えています。
 
↓ SP500 週足チャート
 
↓ラッセル2000 週足チャート
 
↓TOPIX 週足チャート
 
↓マザーズ 週足チャート
 
2020.04に開始した金融相場では、すべての指数が大きく上昇していましたが、2020.10あたりから小型株は横ばい、大型株は上昇するという二極化が進みました。このあたりで金融相場が終了し、業績相場へと移行したと思われます。
 
金融相場では下記のセクターが強いとされていました。
 
金利敏感セクター 銀行、証券、公共サービス、保険 建築、土木、不動産
 
しかしながら、コロナショックで突然経済がストップしてしまったこともあってか、金利敏感セクターにお金が流れるものは多くなく、ウィズコロナ銘柄(クラウドSaaS銘柄、小売)などに資金が入っていたように感じています。
 
今回の金融相場には上記はそこまで当てはまっておらず、不動産セクターの一部に資金が流れ込む程度でした。
 
保険業
証券
銀行
 
今現在2022年1月ですが、利上げ観測を受けて銀行株・金融株などが買われているところもずれているように思われます。本書では、金融相場で銀行株などは大相場をつけるため、その反落で大きく下落するという記載があり、金融相場がイレギュラーだったことで現在上昇代がある銀行株などが買われているのかもしれません。(あくまで勝手な憶測ですが。。)
 
借りる人が減るはずなので銀行・保険株は売られるはずなのですが、本書では金利が現在のような超低金利時代ではない想定であることから、金利収入が増える逆金融相場のほうが利益が出るという見立てもできそうです。
 

 
 

業績相場前半

 
業績相場前半では下記セクターが良いと記載されていました。
 
大型株、低位株 素材関連銘柄 鉄鋼、総合化学、紙パルプ、非鉄、セメント
 
化学
ガラス
鉄鋼
非鉄
紙パルプ
 
2020.10 相場スタート
2021.04 一相場終了
 
というように見えます。また強いと言われているセクターは率直にほぼすべて買われていました。今回は相場サイクルを知らずに投資に向き合っておりましたが、次回何年後に来るかわからない上昇相場では意識したいポイントです。
 
 
 

業績相場後半

 
業績相場前半では下記セクターが良いと記載されていました。
 
中小型株、値がさ株 加工産業 設備投資関連、消費財
 
機械
精密機器
電気機器
輸送用機器
 
機械セクター業績相場前半にピークを打っているようにみえます。一方、精密機器セクターは2021.10にピークをつけて年初から大きく下げており、一方電気機器、輸送用機器はまだ上昇中と言えそうです。こちらも相場サイクル通りの展開と言えそうです。
 

逆金融相場

 
逆金融相場で強いとされるセクターは記載されておらず下記のような注意点のみでした。
 
小型株:大型株を上げるパワーは無い 財務健全:借金はマイナス ヒット商品による成長
 
コンテクスチュアル・インベストメンツ出典のサイクル別の注目セクターではエネルギー関連とあったためそちらも確認してみます。
 
鉱業=エネルギー関連?
 
大型株/小型株 合成指数 上に行くほど大型株優位
 
セオリーでは2021.03くらいで業績相場前半だとするとそこから小型株優位になるはずだが、
そうはなっていない。大型株優位が進む。個人投資家が壊滅するまではこの流れが継続するんでしょうか?
 
 
 

5.初めて知ったこと メモメモ

P124 景気拡大局面の最初は各業界の一流企業に受注が進む。
その後一流企業が供給できなくなったところで三流企業へと受注が流れる。
業績の変化率が大きいのは三流企業であるため、株価上昇率は三流企業の方が高い。
三流企業は上昇率が高いのと同様に下落率も大きいので業績相場終盤は危険。
 
テーマ株投資というのは日本だけの事象 欧米ではあまり見られない(1990年の話?)
 
 

6.本書を読んで考えたこと

この本を読んで一番心に残っていることは「一流プロほど基本に忠実である」というところです。
 
以下、文書を抜粋引用します。

 
一度だけ、ゴルフのプロトーナメントを観戦する機会があった。テレビでは競技のハイライトを追うように有名プロの競技場面をペラペラ見せていきますが、競技場では一箇所に陣取って色々なプロゴルファーを見るか、お目当てのプロゴルファーの後をゾロゾロ追うかのどちらかで、到底息詰まるような競り合いを見る機会には恵まれない。
 
しかし、テレビで映すことのない、プロゴルファーのプレー前後の挙動を見て、非常に関心したことがある。
 
それは実に基本に忠実なのである。
しかも一流と言われるプロになるほど一層それが共通している。
 
例えば、グリーンに近づくと、球の位置から必ずグリーンエッジまで歩測してこれをメモしている。もちろん風の強さ、球の落とし場所の状況を確認し、自分の最大の敵であるコースのあらゆる情報を収集して、おもむろにクラブを抜き出しショットに入る。それにトラブルと思われる状況になっても実に冷静なのである。それは基本に忠実に行ったショットならば必ずリカバリーできるといった自信に満ちているからであろう。
 
導入部が少し長くなってしまったが、要するに専門家と言われる人々ほど、まず基本を身につけ、ことにあたってはそれを忠実に守るとということを述べたかったのである。

 
色々テクニカルなことを学んでいますが、学べば学ぶほど情報の波に埋もれてしまい自分の得意な部分を伸ばせなくなっているように感じております。
 
「相場は繰り返される」という経験則は普遍であるはずです。
 
また、相場を産み出す流れ(金利低下から業績が上向くまでの過程)を詳細に知れたことは非常に良かったです。次の上昇相場は何年後にくるのか検討も付きませんが、そのときまで投資力を上げておいて簡単な相場に備えたいと思います。
 
 
 
 
また、本書とは関係ないですが、広瀬隆雄氏が逆金融相場でなぜ株価が下がるのかという疑問をすっきりさせてくれました。
 
 
・金利はマルチプルに効く
・金利はバリュエーション算出の分母に入るので理論株価が下がる
・借金の多い企業は負担が大きくなる
・長い時間軸の投資テーマであればあるほど、将来価値が変わらなければ、現在価値は下がる
 
とメモ書きのように書いてみましたが、一番下の長い時間軸の投資テーマは価値が下がるというのはあまり考えたことがなく目からうろこでした。そういう目で今の相場を見るとたしかに借金が多くない企業でも大きく下落するのはなんでだろうと考えたときに利益が出るフェーズが遠いことが多く見受けられました。
 
アメリカのインフレを見ると今年大きく金利が上がることはほぼ間違いないので、今年の方針として本書を参考に買ってはいけない銘柄群(自己資本比率が低い銘柄、長い時間軸の投資テーマ)は避けていこうと考えております。
 
 
 
 
 
ここまで読んでいただきありがとうございました。
これからもブログ更新続けていければと思います。
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